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生命保険は受取人固有の財産じゃない!?  例外が適用される「著しい偏り」
 
 生命保険金は「受取人固有の財産」といわれる。民法では生命保険金を請求する権利は相続財産から除外され、原則として遺産分割の対象とならない。保険金独自の非課税枠もあり、他の財産よりも優遇されることから、生命保険はオーナー企業の後継者の納税資金や自社株対策の原資に最適といわれる。
 ただし場合によっては、この生命保険金が受取人固有の財産ではなくなる時もある。例えば親が亡くなって3人の子が相続人として残されたケースで、相続財産が預金1500万円のみだったとする。3人で500万円ずつ分配すれば円満解決できそうだが、もし預金以外に長男のみ生命保険金2000万円が支払われていたとすればどうだろうか。長男からすれば、生命保険金は前述のとおり受取人固有の財産なので、もともと自分のものであって相続財産には含まれず、遺産分割には関係ないと主張するだろう。
 しかし最高裁は、こうしたケースに対して、「到底是認することができないほど著しいと評価すべき特段の事情」がある時には、保険金を遺産に持ち戻して分割すべきだと判示している。「特段の事情」とは、保険金の額や遺産の総額に対する比率だけでなく、同居の有無や被相続人の介護などに対する貢献の度合い、各相続人の生活実態などが総合的に考慮されるという。
 判例によれば、仮に金額のみを考慮して判断すると、「遺産総額に対して45%〜50%を超えた保険金」がおおむね持ち戻しの対象になるといわれる。先ほどの例でいえば、預金1500万円と生命保険2000万円で遺産総額は合計3500万円なので、それに占める保険金の比率は約57%となり、持ち戻しの対象になるわけだ。長男が受け取る遺産は生命保険金のみの2000万円、他の2人はそれぞれ預金750万円を得るのが最終的な結論となりそうだ。